【ペットロス】なりやすい人の特徴は?医療機関を受診すべき症状は?医師が解説【チェックリスト付き】
初めて会ったその日から、愛おしくて愛おしくて、そばにいてくれるだけで幸せだった愛ブヒ。そんな特別な存在を喪(うしな)ってしまったら……。“ペットロス”は、誰しもがなりうる心の病気です。
しかし、我が子との別れを悲しまない人はいません。では、どこからがペットロスで、どのタイミングで医療機関を受診すべきなのでしょうか。『虹の森クリニック』院長であり、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医である坂野真理先生が解説します。
ペットロスの症状とは?

palidachan/shutterstock
楽しい時も辛い時も、一緒に暮らしてきた愛ブヒ。あなたにとって家族も同然ですよね。
そんな愛ブヒが急に亡くなったり、離れて暮らさなければならなくなった時、ペットを失ったことに大きなショックを受けてしまう人もいるでしょう。
その喪失感から抜け出せずに、ペットロスになってしまう人が近年増えています。
そんなペットロスの症状には、どんな症状があるでしょうか(*1)?
大きく分けると、次の3つの感情に苦しむことを指します。
(1)悲しみ
ペットロスの症状としてまず挙げられるのは、「悲しみ」の感情です。
例えば、
・ペットを失ったことがとても悲しく、寂しい
・「ペットのいない自分の人生なんてむなしい」と感じる
・ペットに会いたい気持ちでいっぱいになる
・ペットのことを考えると涙がとまらない
・ペットを失ったことを乗り越えられない気がする
・ペットを失ったことに関する悪夢を見る
このような気持ちや状況になるでしょう。
(2)怒り
ペットを失ったことに関する怒りの感情を覚える方もいるでしょう。
例えば、
・自分を置いて先立ってしまったペットや、死という不合理さに対して怒りを感じる
・ペットを救ってくれなかった獣医や他人に怒りを感じる
・ペットを助ける努力をしてくれなかった家族や友人に怒りを感じる
といった気持ちが出てきます。
(3)罪悪感
さらには、罪悪感を覚える方もいらっしゃると思います。
例えば、
・自分が「きちんとペットの面倒を見なかったのでは」と考えてしまう
・「もっとペットのことを大切にすればよかったのでは」と感じてしまう
などです。
これら3つの感情が強いと、ペットロスに苦しむことになります。
<参考文献>
*1 Hunt, Melissa, and Yaniz Padilla. "Development of the pet bereavement questionnaire." Anthrozoös 19.4 (2006): 308-324.
ペットロスが重症化しやすい人の特徴は? セルフチェックをしてみましょう

Tienuskin/shutterstock
愛するペットとの別れを経験すれば、誰しもが前述した3つの感情に襲われるでしょう。
しかし、ペットロスが重症化する人と、ほどなくして立ち直る人とは、どこが違うのでしょうか。
ペットとあなたとの絆や愛着関係が深ければ深いほど、ペットロスの症状が強まる傾向にあります(*2)。
あなたとペットの関係について、下記の項目にどれくらい当てはまるか(当てはまっていたか)、チェックしてみましょう。
・家族の中であなたがペットに一番好かれている
・どんなに忙しくてもペットとの時間を欠かさないようにしている
・帰宅した時、ペットがあなたのところへ一番に寄って来る
・友だちのようにペットに話しかけている
・辛い時は、ペットと触れ合うことが多い
・ペットはあなたがうれしかったり落ちこんだりしているとき、その気持ちの変化に気づいているようだ
・ペットはあなたによくなついていて、あなたの言うことをよく聞く
・ペットはしょっちゅうあなたの後を追いかけてくる
・友だちにペットの写真をよく見せる
・ペットが近寄ってきたときにはほとんど無視したりしないでかまってあげている
・ペットにプレゼントを買うことがある
・他の人と一緒にいるより、ペットといる時間の方が好きだ
・あなたのペットはあなたを困らせることが少ない
・あなたにとってペットは家族の一員だと感じている
・寝る時はペットのすぐ近くで寝ている
・勉強したり、テレビを見たりするときでもペットがすぐそばにいてほしいと思う
あてはまる項目が多いほど、あなたとペットの結びつきは強いと言えます。
その分、ペットを失った時の心への影響も大きくなります。
他にどんな人がペットロスになりやすいのかというのはちょっと答えが難しいですが、日ごろからストレスや不安を感じやすい方は、やはりペットロスになりやすいだろうなと思います。
また、ペットではなく人の場合の研究ですが、親しい人が亡くなった時の心理状態について周囲のサポートがない人は、気分の落ち込みなどの症状が長期化したという研究があります(*3)。
他人からは「ペットが死んだくらいで」と軽視されがちなのがペットロスの辛いところでもあります。
愛ブヒを失った辛さを理解してくれ、あなたの気持ちに寄り添ってくれる人、優しい言葉をかけてくれるよき理解者がいると、早くペットロスから立ち直れるかもしれません。
<参考文献>
*2 Wrobel, Thomas A., and Amanda L. Dye. "Grieving pet death: Normative, gender, and attachment issues." OMEGA-Journal of Death and Dying 47.4 (2003): 385-393.
*3 Houwen, Karolijne van der, et al. "Risk factors for bereavement outcome: A multivariate approach." Death studies 34.3 (2010): 195-220.
医療機関にかかるタイミングは?

SeventyFour/shutterstock
通常は、時間が経つにつれて悲しみが和らいでくるもの。人間の心は、何か辛いことがあっても、そこからちゃんと回復する力を持っているんですね。
でも、どうしても立ち直れず、本格的なうつ病になってしまう方も中にはいらっしゃいます。
例えば、
・食欲低下、体重減少
・眠れない
・物事に集中できない
・何もする気が起きない
・楽しかったことが楽しめない
・気分がずっと落ち込んでいる
といった症状が1ヶ月以上続いており、その結果、仕事や学校を休まなければならなかったり、生活に支障が出ているという方は、うつ病の可能性があります。
このような場合は、早めに医療機関を受診されるとよいでしょう。
また、特に下記のような症状が6ヶ月~1年以上続いていて、仕事や生活を普通に送るのが難しい状況の場合は、『遷延性悲嘆障がい』(*4)、もしくは『持続性複雑死別障がい』(*5)という病気の可能性があります。
本来この病名は、人が亡くなったときのような場合が前提になっていますが、ペットが亡くなった場合でも当てはまると言われています(*6)。
・悲しみ、怒り、自責感、死を受け入れられない気持ちが続く。
・自分の感情が麻痺してしまったように感じる。
・自分の一部を失ったかのような気持ちが続く。
・何をしていても失ったペットのことがずっと頭から離れない。
・ペットなしには人生は無意味で、孤独でむなしいという感情が続く。
・ペットの後を追って、自分も死にたいという気持ちになる。
・ペットがなぜ亡くなったのかを考え続けたり、遺品を亡くなる前とまったく同じ状況にしておいたりする。一方で、ペットを思い出すものを遠ざけようとするなど、揺れ動く気持ちがある。
・他人を信頼したり、配慮したりすることが難しく感じ、人づきあいを避けて生活する。
・ペットの痛みが自分の痛みのように感じたり、ペットの幻の鳴き声が聞こえたり、ペットの幻の姿が見えたりする。
このような症状の場合も、医療機関の受診をお勧めします。
特にカウンセリングが充実している心療内科、精神科、カウンセリングセンターなどが良いでしょう。
うつ病や遷延性悲嘆障がいは、自分だけの努力で改善するのは難しいもの。ひとりで悩まず、どうか早めに専門家の力を借りてくださいね。
<参考文献>
*4 World Health Organization. International classification of diseases for mortality and morbidity statistics (11th Revision). 2018.
*5 American Psychiatric Association. Diagnostic and statistical manual of mental disorders (DSM-5®). American Psychiatric Pub, 2013.
*6 Lee, Sherman A. "Does the DSM-5 grief disorder apply to owners of deceased pets? A psychometric study of impairment during pet loss." Psychiatry Research 285 (2020): 112800.
医師プロフィール
坂野真理(さかのまり)
虹の森クリニック院長・虹の森センターロンドン代表
2003年日本医科大学医学部卒業。近年は、東京大学医学部附属病院精神神経科(こころの発達診療部)、医療福祉センター倉吉病院精神科等で勤務。英国キングスカレッジロンドンの精神医学・心理学・神経科学研究所において修士号取得。2018年より虹の森クリニック開業。2020年より虹の森センターロンドンを開設。
日本精神神経学会専門医・指導医、精神保健指定医、子どものこころ専門医、日本医師会認定産業医。
虹の森クリニック
鳥取県倉吉市にある精神科、児童精神科のクリニック。
一軒家を改造した「友人の家のように気楽に入れるメンタルクリニック」を目指した外観となっている。
また、併設の福祉施設にて行われる心理療法を診療の中心として、薬に頼りすぎない診療を追求している。
2020年にはメンタルヘルス研究の盛んな英国ロンドンに虹の森センターロンドンを開設するとともに、オンラインカウンセリング事業も開始。全国の子どもから大人まで、幅広くメンタルヘルスに関わる相談を受けている。
住所:鳥取県倉吉市八屋203-7
電話:0858-27-1811
受付時間:火~金 10:00~19:00
土 9:00~18:00
月・日・祝日は休診
HP:https://www.nijinomori-dr.com
こちらの記事も合わせてチェックしてみてくださいね。
おすすめ記事
-
【取材】ロッチ中岡〜そのフレブル愛、ガチ中のガチ。隠れブヒラバーが語る、細かすぎる魅力とは〜【前編】
みなさんが愛犬家ならぬ“愛ブヒ家”として思い浮かぶ芸能人といえば、草彅剛さん、レディー・ガガさんなど、フレブルを飼っている方が多いと思います。が、ロッチ中岡さんも、じつは大のフレブルラバーだというのをご存知ですか? フレブルを飼っていないのにもかかわらず、中岡さんのインスタグラムを覗くと、たくさんのフレブルアカウントがフォローされていて、わが『FRENCH BULLDOG LIFE』モデルのnicoやトーラスも、その中の一頭。
そんな中岡さんに、フレブルの魅力を語っていただきました。そのブヒ愛っぷりは、思ってた以上! ガチ中のガチでした!?
取材 -
【取材】9歳で脳腫瘍を発症し「4年7ヶ月間」生存。フレンチブルドッグ・桃太郎の奇跡と軌跡
愛犬が「脳腫瘍」と診断されたとき、言葉にできない絶望感を味わうことと思います。筆者も脳腫瘍で愛犬が旅立ったひとり。だからこそ、どれほど厄介で困難な病気かを理解をしているつもりです。「発症から1年生存すれば素晴らしい」とされるこの病気。
ところが、フレンチブルドッグの桃太郎は9歳で脳腫瘍を発症し、なんと4年7ヶ月間も生き抜いたのです。旅立ったときの年齢は13歳と11ヶ月、レジェンド級のレジェンドでした。さらには、治療後3年間は一度も発作が起きなかったといいます。
この事実はフレンチブルドッグだけでなく、脳腫瘍と闘う多くの犬たちに勇気と希望を与えるに違いありません。桃太郎のオーナーである佐藤さんご夫婦に、治療の選択やケアについて詳しくお話しをうかがいました。
取材 -
【取材】上沼恵美子さん「もう一回だけ抱きしめたい」愛犬ベベとの12年間
運命の子はぼくらのもとにやってきて、流れ星のように去ってしまった。
その悲しみを語ることはなかなかむずかしい。
けれども、ぼくらはそのことについて考えたいし、泣き出しそうな飼い主さんを目の前にして、ほんのすこしでも寄り添いたいと思う。
その悲しみをいますぐ解消することはできないが、話をきいて、泣いたり笑ったりするのもいいだろう。
こんな子だった、こんなにいい子だった、ほんとうに愛していたと。
ぼくらは上沼恵美子さんのご自宅へ伺って、お話をきこうと思った。
取材 -
【中川大志インタビュー】エマは犬ではなく、大切な娘です。国宝級イケメンが愛犬のフレンチブルドッグと一緒に登場
『FRENCH BULLDOG LIFE』に国宝級イケメン登場! 俳優の中川大志さんが、愛犬であるフレンチブルドッグのエマちゃん(2歳の女の子)にメロメロとの情報を聞きつけ、中川さんを直撃。そのフレブル愛をたっぷり語っていただきました。他のフレブルオーナーさん同様、濃すぎる親バカエピソードが次から次へと飛び出しました。
取材 -
【取材】川口春奈とアムのやさしい世界。ー大人気女優は生粋のフレブルラバー
いまをときめく人気女優が、フレンチブルドッグラバーであるという事実。
そうです、その人は川口春奈さん。
アムちゃんというパイドの女の子と暮らしています。
話を聞けば聞くほど、そして春奈さんとアムちゃんのやりとりを目の当たりにするほどに、そのフレンチブルドッグ愛がわたしたちのそれとまったく同じであることに、なんだかうれしくなってしまったのでした。
春奈さんとアムちゃんのすてきな暮らしを、BUHI編集長の小西がいつくしみながら、切り取らせていただきます。
-
【ドッグフードの闇を暴く】フレンチブルドッグに本当におすすめの食事とは?
私たちが「フレブルライフ」をスタートして8年。雑誌「BUHI」も含めると、約20年フレンチブルドッグに関する情報だけをお届けしてきました。
そしてフレンチブルドッグを知れば知るほど、犬種によってかかりやすい病気や性格、運動量が異なることを痛感しています。
犬によってカラダもライフスタイルも大きく違う! なのに…日本のドッグフードは「全犬種同じ」ものが売られているのです。
しかも日本はペット「後進国」。フードにおいては、闇深い点がたくさんあります。
今回はフレブルライフ読者の皆さまだけに、ドッグフードの闇や矛盾を伝えさせてください。
もちろん最後には解決策もお伝えしていますので、どうかご安心を!
-
【肉球の香りがするビール、誕生】イラストは千原ジュニアさん【フレブルLIVEで先行販売!】
『French Bulldog LIVE 2024(フレブルLIVE)』は、11/9(土)-10(日)の2days!
今年は例年以上に反響があり、二日間ともに駐車場付きチケットがSold outとなりました!
年々パワーアップしている「フレブルLIVE」ですが、今年はオリジナルのクラフトビールを制作。
世界初・肉球の香りがするビールで、その名も「Paw Pad Ale」。
パッケージのイラストは、なんと千原ジュニアさんが手がけてくださいました。
フレブルLIVEにて、先行販売いたします!
フレブルLIVE -
【スペシャル対談】愛犬の旅立ちと供養。霊感がない人も「愛犬の成仏」を知る方法!?【シークエンスはやとも×PELI】
愛犬の旅立ちは、誰もが目を背けたくなるもの。けれど事前に知っておくこと、考えておくことで、救われることがたくさんあります。
今回は、お盆スペシャル企画。世間が認めるほどの霊視能力をもつお笑い芸人「シークエンスはやとも」さんに、愛犬の旅立ちや供養についてインタビュー。
インタビュアー兼対談相手は、大の犬好きで心霊分野の知識にも長けているPELIさん。
「愛犬が旅立ったあと、ベッドやおもちゃはどうすればいい?」「お骨はどうするべき?」「お花やお線香は喜んでくれる?」
さらには、霊感がない人でも愛犬が成仏したことを知る方法まで。
お笑い芸人だからこそ暗くなりすぎない、むしろ心がスッと軽くなる。
永久保存版のスペシャル対談です!
対談 -
諦めかけた命。あれから2年、フードを変えたら15歳の今もお散歩大好きなフレンチブルドッグに!
今日は15歳の愛ブヒと暮らす、編集メンバーの実体験。
愛ブヒは二年前からすべてのフードが合わなくなり体重が激減。検査をしても異常はなく「年齢のせいですね…」と言われてしまいました。
もう諦めるしかないのかな…そんなとき、我が家に届いたのが「THE fu-do(ザ・フード)」の試食品でした。
そして「THE fu-do(ザ・フード)」を食べつづけて二年、愛ブヒは15歳になり、今も元気にお散歩をしています。
今回は、二年前の絶望から今までを包み隠さず、時系列でお話しさせていただきます。
-
【イベントレポ】5,000頭のフレンチブルドッグと7,000人が集まった「フレブルLIVE2024」の全貌!
11/9(土)-10(日)の二日間にわたって開催された『French Bulldog LIVE 2024(フレブルLIVE)』。
今年はのべ5,000頭のフレンチブルドッグと7,000人のフレブルオーナーが集まりました!
day1の司会はフレブルラバーのロッチさん。day2の音楽フェスには世代ど真ん中のPUFFYが出演するなど、例年以上に豪華なラインナップ。
北は北海道、南は鹿児島県から。全国のフレンチブルドッグが一堂に会した「フレブルLIVE2024」の模様を、詳しくお届けです!
最後には2025年の情報もありますので、要チェックでございます!
フレブルLIVE
特集
-
フレンチブルドッグの性格/基本情報
からだの特徴や性格、歴史など基本的なフレブル情報をご紹介!
-
子犬/はじめてのフレンチブルドッグ
フレブルビギナーの不安を解消!迎える前の心得、揃えておきたいアイテム、自宅環境、接し方などをご紹介
-
フレブル病気辞典
獣医師監修のFrenchBulldogLifeオリジナル病気辞典。愛ブヒを守るための情報満載
-
フレブルライフ ストア
本当にいいものだけを、厳選紹介。FBLの公式オンラインストアです
-
French Bulldog LIVE⚡️2024 (フレブルLIVE)
-
【特集】レジェンドブヒの肖像ー10歳を超えて
10歳オーバーの元気なブヒを取材し、長寿の秘訣を探る。
-
【特集】5歳からのミドルシニアLIFE
ご長寿ブヒをめざすヒントがここに!
-
【特集】FBL編集部の「アバウトな幸福論」
-
【特集】編集部厳選!本当に使えるドッグギア
フレブルと暮らす編集部が、自信をもって紹介したいアイテムとは!?
-
【特集】もしものときの名医名鑑
ヘルニアやガンなど、その道の名医たちを独占取材!
-
【特集】わたしは、愛ブヒのリーダーになるのダ。
プロドッグトレーナーが、リーダーになるための秘訣を解説!
-
【特集】短命拒否権ーフレンチブルドッグは、もっと生きる
この特集は、『短命』のレッテルを返上するための、有益なフレブル生活記録簿です。
-
虹の橋
愛ブヒが虹の橋へ向かう準備をするための場所
-
フレブル里親/保護犬情報
French Bulldog Lifeでは、保護犬を一頭でも多く救うための活動支援をしています。