2022年11月24日1,762 View

【誤飲】飼い主の行動が生死を分ける!“誤飲”に備えて知っておきたい「準備と対応」

国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。今回は、犬の事故率ではトップクラスである“誤飲”について。万が一に備え、愛ブヒの命を救うためにオーナーさんが知っておくべき“準備と対応”方法についてお伝えします。

フレンチブルドッグ,しつけ

誤飲は事故のトップクラス! 

フレンチブルドッグ

Larissa Chilanti/Shutterstock

 

愛犬と楽しく暮らす中で、多くの方が経験してしまう“誤飲”。ちゃんと気をつけていたとしても、誤飲の危険は常に生活の中にあります。

 

家の中にある誤飲をしたら危険な物の紹介や、誤飲を防ぐ方法についての記事は、こちら「【誤飲】家の中は危険だらけ!? 犬が食べると命にかかわる身近なもの10種」を参照ください

 

誤飲を防ぐ鉄則は、「犬たちが食べたらダメな物は、絶対に届かない場所に片付けておく」です。オーナーさんのこの管理が、なにより大切。

 

しかし、どんなに気をつけていても、生活をともにする中で、事故を100%は防げません。だからこそ、すべてのオーナーさんが、誤飲が起きた際にできる対処を知っておく必要があります。

 

つまり、オーナーさんの知識と準備が、愛犬を救うのです! さあ、早速学んでいきましょう。

 

全オーナー対象!愛犬を救う「事前準備」

フレンチブルドッグ

bozsja/Shutterstock

 

まずは、やっておくべき事前準備を確認しましょう。

 

言わずもがなですが、犬たちには人間のような救急車がありません。119に電話をしても救急隊は来てくれませんし、搬送先も手配してもらえません。

 

事故が起きたときは、みなさんに“保護者”の任務だけでなく、“救急隊員”の使命も課されるのです。

 

愛犬の救急隊になるために、以下のような準備が必要不可欠です。

 

<準備その1:緊急連絡先の電話番号を登録する> 

誤飲をしてしまったときは、すぐに動物病院に連絡をして指示を仰ぐ必要があります。皆さんは、電話を掛ける先を把握していますか? 電話番号はスマホに登録してありますか? 

 

かかりつけの動物病院が24時間やっていればいいですが、そうではないことがほとんど。かかりつけの休診日や、休診の時間をカバーするために、別の病院の連絡先も確保しておきましょう。

 

近場の夜間診療の病院の連絡先も調べておき、24時間365日対応できるよう準備しておくのが理想です。

 

旅行などでは、出先での緊急連絡先の確保もお忘れなく!

 

<準備その2:緊急連絡先リストを貼っておく>

リスト 

準備その1で把握した動物病院の情報を、すべて紙に書き出しましょう。

 

そして、月曜から日曜日まで、時間帯によって、どこの動物病院が営業しているのか、ひと目ですぐわかる表を作成してください。学校の時間割表のようなイメージです。

 

各動物病院の電話番号も書き、パッと見てすぐに連絡できるようにしておきます。

 

そしてその表を、家族みんなが見える所に貼っておきましょう。

 

事故が起きた時は、手が震え、パニックで判断力が落ちます。スマホに動物病院の営業時間や営業日を入れているだけだと、パッと把握しきれないこともあるため、このようなアナログな方法が非常に有効です。

 

<準備その3:病院への緊急電話の練習をする> 

電話する女性

Estam/Shutterstock

 

消防署の講習でも、電話をかける練習はよく実施していること。それだけ、事故が起きた時に“冷静に電話をかける”ことは、難しいということなのです。

 

あくまで一例ですが、以下の文章に愛犬を当てはめて話してみましょう。

 

「緊急です! 愛犬が誤飲しました。

そちらにいつも通っている、犬の○○○(愛犬の名前)の飼い主の○〇〇です(飼い主の名前)」。

 

まずはここまで話せればOK! このあとは、動物病院の方が質問を投げてくれるはずです。

上記の電話内容のポイントは以下のとおりです。

 

・受付の人は、いろんな電話を受けます。それこそ、ワクチンや健康診断の話など、緊急性のない電話も多いもの。“緊急対応が必要だ”と最初に伝えて、スピード感のある対応の必要性を訴えましょう。

 

・カルテの確認をすることもあるので、「初診なのか、かかりつけなのか」も伝えましょう。

 

・病院にはいろいろな動物が来ます。“犬”であることも忘れずに伝えましょう。

 

・ペットの名前だけだと、他の子と間違われてしまうかもしれません。“オーナーさんの名前”も忘れずに伝えましょう。

 

いちばん大切なことは、“冷静に聞く&話す”こと。焦って一方的にまくし立ててしまっても、相手は情報を把握しきれません。

 

受付の方もプロですから、「緊急です! 愛犬が誤飲しました!」だけを伝えても、あとは病院側で必要なことを質問してくれます。とにかく落ち着いて答えることが大切です。

 

さあ、家族みんなで口に出してみましょう。「緊急です! 愛犬が誤飲しました!」。

 

<準備その4:対処法を身につける> 

誤飲の中でも、窒息している場合は緊急対処が必要です! 最近は動画などでも窒息時の対処法のやり方を見ることが出来ます。

 

しかし、やったことがないことを動画だけで学ぶのは難しいもの…。ぜひ一度、かかりつけの獣医さんにやり方を教えてもらいましょう。

 

全オーナー対象!愛犬を救う「その場での対処」

ボール

Abel Halasz/Shutterstock

 

事前準備をした上で、もし誤飲が起きてしまったら…。以下の対処で、愛犬を守りましょう!

 

<対処その1:自己判断で楽観的にならない!> 

誤飲が起きた時に、「多分、きっと、大丈夫…」と祈っていても、状況は良くなりません。

 

窒息していなくても、中毒や、腸などに詰まる危険もあります。

 

大丈夫かどうか、不安な時間を過ごすのではなく、少しでも早く病院に連絡して、指示を仰ぐことが重要です。

 

<対処その2:パニックの時に自分で対処し切ろうとしない!> 

救急隊員と違い、私達一般のオーナーは、特殊な訓練を毎日続けている訳ではありません。自分だけで対処しようとしても限界があります。

 

誤飲した物によっては、吐かせてはいけなかったりなど、対処方法が異なります。自分だけでなんとかしようとせず、プロに相談しましょう。

 

獣医さんとの密な連携を取れるように、日頃からの人間関係を構築しておくことも大切です。

 

<対処その3:焦って口の中に手を入れない!> 

口の中にある物を無理やり取り上げようとすると、愛犬の歯でオーナーさんが大怪我をすることがあります。愛犬もパニックになり、顎の力が制御できないこともありますから、手は口に入れないようにしましょう。

 

<対処その4:お尻から出ているものを引っ張らない!> 

引っ張る

cunaplus/Shutterstock

 

布や紐などの誤飲では、お尻から少しだけ紐が出てくることもあります。引っ張って出したい気持ちになりますが、これは絶対にNG。

 

見た目より長く、腸で絡まり、引っかかってしまっている場合があるためです。そんな状態で引っ張ってしまったら…ゾッとしますよね。紐が出て来たら、必ず獣医さんに相談しましょう。

 

誰にだって事故は起きる! だから準備と対策を

フレンチブルドッグ

Teerawut Bunsom/Shutterstock

 

ここまで、誤飲事故への事前準備と対処のポイントをお伝えしました。今まで誤飲で怖い思いをした方も、まだ誤飲の事故が起きていない方も、オーナー全員に必要な知識です。

 

最後に一つ、誤飲にまつわるエピソードを紹介します。

 

あるオーナーさんの愛犬は、子犬の頃からとってもお利口さん♪「誤飲なんてしたことないのよ」と誇らしげ。

 

明日は、記念すべき初めてのお誕生日。ケーキにごちそう、パーティーの準備も万全です。

 

そんな1歳のお誕生日の前夜、事件は起きました。リビングに置いてあったパンプス用の短い靴下が見当たりません。オーナーさんは状況を信じられず、靴下を探し回りますが、どうしても見つかりません。

 

半信半疑ながら、オーナーさんは動物病院に電話をします。しかし、夜なので電話がつながらず、震える手で急いで夜間診療を探し、電話をして、車を走らせました。

 

結果、その子は靴下を丸呑みしていました。病院での処置の間中、生きた心地がしなかったそうです。

 

すぐに病院に搬送したおかげで、愛犬は命をとりとめました。家族は家ではなく、病院で朝を迎え、涙涙のハッピーバースデーを迎えることになりました。

 

このオーナーさんは、とても愛犬想いで、家の中も整頓して、安全に暮らしていました。それでも、生活空間ですから、事故を100%防ぐことはできません。だからこそ、事前の準備とその場での対処が重要になってくるのです。

 

病気と違い、オーナーさんの心がけで救うことができる可能性が高い誤飲の事故。ぜひ、家族みんなで準備と対処を確認し、愛犬の笑顔を守っていきましょう!

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

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