2022年12月19日9,428 View

【あえて是非を問う】ドッグランは行くべきか否か。その「理想と現実」とは【フレブル初心者必読!】

国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。今回は、フレンチブルドッグを飼ったばかりのオーナーさんが一度は考える「ドッグランって行ったほうがいいの?」という疑問についてお答えします!

フレンチブルドッグ,しつけ

ドッグランって、行ったほうが良いの? 

フレンチブルドッグ

Grisha Bruev/Shutterstock

 

皆さんは、ドッグランによく行く派ですか? ドッグトレーナーとして、よくオーナーさんから聞かれることに、「ドッグランって、行ったほうが良いの? 」という質問があります。

 

結論からいいますと、「状況によりけりだけど、別に無理して行かなくても良い場所なんじゃないの?」です。

 

うーん? 曖昧な答えですよねぇ。皆さんの愛犬だったらどうなのか、その答えを探すには少し説明が必要です。

 

そこで今回は、みなさんと愛犬がドッグランに行くべきかどうか、考えてみましょう。

 

ドッグランは、なんのための場所? 

フレンチブルドッグ

Welshea/Shutterstock

 

そもそもドッグランって、なんのための場所なのでしょう? 本来ドッグランは“リード無しで犬たちを自由にさせてあげられる場所”というのが基本的な役割です。

 

しかし、実際は“いろんな目的”の人が集まっています。

例えば…

・オーナーに合わせて一緒に歩くばかりじゃなく、愛犬のペースで走り回らせてあげたい。

・リードを外して、のんびりぼーっとしたい。

・愛犬と気の合う犬の友だちができたらいいなぁ。

・広々とした場所で、ボール投げやフリスビーなどで一緒に遊びたい。

・他の犬が大好きなので、交流させてあげたい。

・他のオーナーさんと交流したい。

・パピーの社会化をしたい。

・訓練競技会があるので、リードを付けずに練習をしたい。

という方もいます。

 

ほかにも、

・私はもう疲れたの…。他の犬に相手してもらって! 

・私はスマホがしたいの。ドッグランでは愛犬を放置できて便利よね。

・私、お散歩嫌いなのよね。自分で動き回ってくれる? 

 

など、本当にいろんなタイプのオーナーさんが集まっています。

 

どの理由が良いとか、悪いとかをジャッジしたいのではありません。お伝えしたいことは、“ドッグランは、決してみんなが同じ目的で来ている場所ではない”ということなのです。

 

ドッグランの理想と現実

フレンチブルドッグとビーグル

Spiky and I/Shutterstock

 

来ている目的が違うということは、愛犬だけでなく、他の犬やオーナーさんに対しての意識も違います。

 

理想的なオーナーの役割としては、

・自分の犬を放置せずに常に見ておく。

・他の犬や人に迷惑をかけていそうなら、すぐに止めに行く。

です。

 

しかし先述の通り、お疲れ気味の方や、完全放置の目的で来ている方も少なからずいます。愛犬のことを勉強し始めたばかりの初心者オーナーさんもいます。

 

ドッグランによっては、管理スタッフがいてサポートしてくれたり、その地元のベテランオーナーさんがルールを徹底しようと声がけしていたりする場所もあります。

 

しかし、多くのドッグランは管理者不在で、それぞれのオーナーさんの倫理観やトレーニングレベルに委ねられています。

 

ドッグランで事故が起きる状況を人間で例えるなら、管理者のいないクラブみたいなものでしょうか。

 

クラブには、はじっこで音楽を聞きたいだけの人、ナンパしたい人、踊りたいだけの人… いろんな目的の人が混在します。

 

もし管理者不在だったら、しつこ過ぎるナンパで怖い思いをする人がいたり、興奮した人同士の暴力沙汰だって起きてしまいます。人間ですら、個々の倫理観だけに依存したら、事故を防ぐことは難しいのです。

 

ドッグランという場所自体に問題があると言うより、その場所に参加するみんながトラブルを防ぐ意識を持たないと、どうしても事故は起きてしまいます。

 

ドッグランで起こりうる事故

フレンチブルドッグ

mala_koza/Shutterstock

 

では、ドッグランではどんな事故が起きやすいのでしょうか? 

 

・楽しく遊んでいたはずが、興奮しすぎて大喧嘩に発展。

・興奮して狩りのスイッチが入ってしまい、他の犬を追いかけ回して攻撃。

・しつこくマウンティングして大喧嘩。

・1頭だけが追い詰められたり、集団で噛みつかれてしまう。

・体格差を無視した遊びで小さい方が怪我をしてしまう。

・資源(食べ物やおもちゃ)を巡った闘争。

 

人間だって事故を起こすように、犬たちだって事故を起こします。そして厄介なのは、犬たちの攻撃方法は、暴言やパンチではなく、「噛みつき」です。

 

侍なら刀、犬なら口。最強の武器である、あごと牙を繰り出します。怪我の深刻さも人間のケンカの比ではありません。

 

ナイフを持ち出した人間と同じくらい怖いのです。

 

ドッグランは行かなくたって別にいい

ドッグランのフレンチブルドッグ

sanjagrujic/Shutterstock

 

もちろん、なるべく事故を起こさないために、オーナーさんがしっかり犬を見ておき、興奮してきたら引き離して冷静にさせたり、相性の悪そうな犬がいたら、愛犬と共にドッグランから出るようにするとか、配慮できることはたくさんあります。

 

しかし、何度も繰り返しますが、すべてのオーナーさんが同じ倫理観、同じ目的で集まっているわけではありません。

 

初対面の犬、初対面の人同士ですから、事故を防ぐためには、すごく気を遣いあって、平和を作り上げなければいけません。

 

しかし残念ながら、そもそも愛犬を見ておく気がないオーナーさんもいるでしょう。また頑張って愛犬を管理しようとしたとしても、愛犬を制御しきれないことだってあるでしょう。

 

だからこそ、皆さんができることはただ1つ。

 

ドッグランに入りたいなと思っても、その場にいる人、犬、雰囲気を見て、愛犬が絶対に安全だという確信が無かったら、いさぎよく立ち去りましょう!

 

「せっかく来たのに〜」と思うこともあるでしょうが、ダメなものはダメ。

 

ドッグトレーナーである私ですら、その場にいる犬と人をすべてコントロールする魔法は使えません。

 

「あー…、なんか荒っぽい雰囲気かな」と感じたら、絶対に愛犬を中に入れません。怖いですもん。もめたくないですもん。

 

入る前は大丈夫そうだと思っても、入ってみてから愛犬が嫌そうにしていたら、即座に出るようにしています。

 

ドッグランは行かなくたって別にいい

フレンチブルドッグ

Ekaterina Poltoracnienko/Shutterstock

 

ドッグランは、病院などと違って、どうしても行かなければいけない場所ではありません。

 

SNSでは、ドッグランで楽しく遊ぶ子を見かけますし、うちの子もああやって遊んでくれたらなぁなんて、夢広がるかも知れません。

 

しかし、決して少なくないオーナーさんが「うちはドッグランには行かない」と言っています。

 

その理由が、事故に巻き込まれそうだった経験があったり、事故を目撃したり、事故を起こしたり、起こされたりしたから。

 

もし皆さんや愛犬が、行きたくないなと思ったら、行かなくたっていいのです。

 

なぜなら、愛犬の幸せは、ドッグラン以外でも作れますから。

 

ちなみに我が家は、郊外に行ったときに、全然人も犬もいないドッグランなら使ったり、知っているオーナーさんと犬だけの場合なら入ったりしますが、初対面の犬が多い場所は避けることが多いです。

 

のびのび遊ぶために出来ること

フレンチブルドッグ

Lee waranyu/Shutterstock

 

ドッグランを使わなくったって、楽しい遊びはたくさんあります。

例えば… 

・河川敷などの広い場所でロングリードをつけて広々走り回る

ボール投げも、のびのび出来ますし、ロングリードをつけた他の犬たちと一緒に駆け回ることも出来ます。もし興奮しすぎても、リードで制御ができる分、ノーリードより安心です。

・森や山に足を伸ばしてみる

実は、「犬を迎えてから、元気すぎる愛犬の体力を発散させるために、週末は山に行くことが習慣になりました」という家族って、多いのです。

・オーナーさんが一緒に遊ぶ

犬と遊べずとも、オーナーさんが最高の理解者であれば大丈夫。室内、屋外関係なく、一緒にできる遊びを増やしていきましょう。

友達と縁を深める

気の合う犬がいれば、一緒にお散歩をしたり、家に招いたり、貸し切りドッグランを使う。

 

ほかにも、お家ごとにきっと良い遊びがありますよね。ドッグランを使わずとも、愛犬を笑顔にする方法は、オーナーさんが一番知っているはずです。

 

ドッグランは、行ったっていいし、行かなくったっていいのだ! 

フレンチブルドッグ

Olga Kri/Shutterstock

ドッグランは、あくまで囲いがあって、リードを外せる場所というだけです。

 

ドッグランや自宅以外では、基本的にリードを外すことが許されていない今の日本社会に置いては、リードを外すことの出来る貴重な空間ではあります。

 

しかし、その場所が楽しい場所になるのか、危険な場所になるのかは、そのときの状況によって異なります。

 

誰が守ってくれるわけでもありませんから、愛犬と自分のことは、オーナーさん自身で守る必要があります。

 

どうか、「他の子達は喜んでいるみたいだし、なんとかしてうちの子もドッグランに慣れさせなきゃ!(汗)」と思い詰めないでください。

 

犬だからって、ドッグランに行かなきゃ不幸な訳ではありません。

 

もしドッグランに入っても大丈夫なか判断が難しかったり、すでに愛犬がドッグランで咬んでしまったことがあって困っている場合は、少しでも早く、専門家に相談しましょう。どうか一人で抱えて、悩まないでください。

 

ドッグトレーナーに依頼をする場合も、複数人と面談するようにしましょう。

 

そして、そのトレーナーが家庭犬のトレーニングに関しての知識と豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

 

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