【取材】介護はモモがくれた濃密な時間。死の淵から何度も生還した不死鳥のような16歳!#21 モモ
10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog Life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。
今回は、何度もの危篤から復活した不死鳥のような16歳、モモちゃんの登場です。
「延命治療はしない」と決め、覚悟の断薬。そのとき起きた奇跡とは……。
モモちゃんプロフィール
年齢&性別
16歳の女の子
体重
10kg (最近はもう少し軽め)
大好きなこと
食べること、お出かけ
既往歴
10歳で子宮水腫になり、子宮を摘出。
11歳から12歳にかけて、2度誤飲があり、入院や開腹手術。
16歳の2020年春、引き付けから何度も危篤に陥るが復活。
食いしん坊のおてんば姐さん
優しくて、人には何をされても怒ることがなく、シニア期からは“モモ仙人”とも呼ばれているモモちゃん。
若い頃はどんな子だったのでしょうか。オーナーの村雲さんに伺いました。
「ワンコが大好きで、本人は友好的なつもりなんだけど、大人しい子から見たら遊び方が激しかったと思います。
相手も激しい子だとケンカみたいになったり。
でもシニアになってからは、耳も遠くなり、そういうこともなくなりました。
穏やかで仙人のような悟りさえ感じさせるようになって、モモ仙人と呼ばれるようになりました。
その前には、若いブヒにモテモテで“熟女モモ”なんて呼ばれてたんですけどね(笑)」
友だちワンコが大好きな、おてんば姐さんだったんですね。
また、食欲旺盛で、10歳のときの子宮水腫以外には病気という病気もなく、とても丈夫だったそうです。
「食欲は落ちたことがありません。
食事は仔犬期からずっと同じで、朝夕2回、『PROPLAN』のドライフード(丸呑みするので小粒のもの)に、犬用ミルク『DOG MAINTENANCE MILK』をまぶして、ウェットフードの『dbf』ささみレバーミンチ缶を混ぜてあげていました。
シニアになってからは、ドライフードを『メディコート』の老齢犬用に変え、免疫力が上がるという『たもぎ茸』のパウダーも、フードに振りかけて与えていました。
最近は固形物が食べられなくなってしまい、食欲が落ちて悩んでいましたが、『Butch』を試したらすごく食い付きがよく、食欲が戻りました。
今は『Butch』をすり潰して、レンジでチンして柔らかくして食べさせています」
食欲が旺盛すぎるので、誤飲だけは気を付けていたそうですが、その他には特別に気を付けることもなく、とにかく丈夫で手が掛からない子でした。
最愛の娘・サクラちゃんとの別れ
丈夫で健康なモモちゃんですが、大きな悲しみも経験しました。
可愛がっていたモモちゃんの長女・サクラちゃんを、交通事故で亡くしてしまったのです。
モモちゃんが2歳になる前に産んだ6匹の仔犬の内、唯一村雲家に残ることになったサクラちゃん。
5年間一緒に暮らしましたが、あるときモモちゃんと村雲さんの目の前で、トラックに撥ねられてしまったそうです。
「モモはその場でじっとしていましたが、悲しみは深く、しばらくご飯も食べられないほどでした。
モモが生きてきた中で、一番悲しい出来事だったと思います」
何とか立ち直ったモモちゃんですが、亡くしたサクラちゃんを忘れたことはなかったのでしょう。数年後、こんなことがありました。
「仔猫を一時保護したことがあったのですが、モモはその子をとても可愛がっていました。その姿に母性本能を感じて、微笑ましかったです」
サクラちゃんを可愛がった記憶が甦り、きっとモモちゃんの心も癒されたのでしょうね。
ブヒ友の輪
深い悲しみを経験したモモちゃん、そして数年前に精神的に参っていた時期もあったという村雲さん。
そんな二人を励まし、前向きな気持ちにさせてくれたのが、“ブヒ友”でした。
「フレブルを飼っているというだけで、即家族(笑)!っていうくらい、ブヒオーナーは結束が強いと思います。
SNSでの交流をきっかけに、関東にも関西にも仲間ができて、ブヒオフ会に参加したり、お家に泊めてもらったり。
私にもモモにも、とっても楽しい時間でした。
地元にも家族のように付き合っているブヒ友がいて、年に1回はグループでブヒ旅行に行ったり、ブヒキャン(キャンプ)したり、お誕生日会したりしています。
何かあれば励ましたり励まされたり、ときには駆けつけてくれたりもします。
他のことももちろんですが、こんなに良い仲間ができたことだけでも、本当にフレブルを飼って良かったと思います。
これから犬を飼いたい皆さんにも、絶対フレブルをオススメします。
幸せを運んでくれますよ!」
大変だけど愛おしい、介護の時間
お友だち大好き、お出かけ大好きだったモモちゃんと村雲さんですが、介護が必要になってからは、お家で二人きりの大切な時間を過ごしています。
「モモは一層可愛く、愛らしく、毎日一緒にいて楽しいこともたくさんあります。
ですが、介護生活はやっぱり大変です。
日に何度も引き付けを起こしたり、体調がすぐに変わるので目が離せません。
また、徘徊するので頭や目をぶつけないよう部屋中をクッションで囲んだりもしています。
幸い私は自営なので時間のやりくりはできますが、生活そのものを変えないといけません。
それに病院の治療費など、経済的な負担もあります」
介護中の今もこれまでも、できる限りのお世話をしてこられた村雲さんですが、保険への加入や、ハミガキ、爪切りなど、もっとやっておけば良かったと思うこともあります。
一方、やっておいて良かったと思うのが、ハンドサインです。
「“待て”や“座れ”などをハンドサインで教えておいたことが、耳が聞こえなくなってから役立ちました。
若い頃から、車に乗せてちょっと買い物するときなど、窓越しに手を上げて“待っててね”と伝えたりして教えていたんです。
遠くにいるときにも、こっちを見てくれれば伝わるので、憶えさせておくと良いと思います」
加齢やケガ、病気などで耳が遠くなる犬は少なくありません。
そんな犬たちが悲しい事故に遭わないためにも、小さな頃からハンドサインは練習しておきたいですね。
最期まで飼うということ
そんな介護生活を通じて、“最期まで飼うこと”がどういうことか分かった気がするという村雲さん。
「モモが亡くなったら私がまた参ってしまうんじゃないかと、家族もブヒ仲間も心配して、“モモちゃんが元気な内に2頭目を迎えたら?”と言ってくれました。
ですが、私にはモモが一番大事なので、モモをちゃんと看取りたいんです。
最期の介護の時間は、モモがくれた濃密な時間。
いつも守り神のように私を支えてくれたモモへの、恩返しの時間だと思っています」
支え、支えられ、いつも一緒だったモモちゃん。
「彼女が長生きなのは、私を守るためかもしれない」と村雲さんは笑います。
「特別なことはしてないんですよ。元々丈夫なんです。そして食いしん坊でいやしん坊でたくましい(笑)。
何度も危篤になって生還したときも、先生に内臓はどこも悪くないと言われました。だから長生きなんだね、と。
あと、私が自営なのでいつも一緒に居られたため、ひとりぼっちのストレスを感じずに暮らせたのも、良かったのかもしれません」
危篤になった原因は脳かもしれないとのことでしたが、モモちゃんの年齢を考慮し、リスクのある精密検査はしないことにした村雲さん。
最近は投薬もやめたそうです。
「精密検査をせず、投薬もやめた理由の一つは、少しでも長く生きていて欲しいけど、人間のエゴで延命治療はしない、と決めていたことです。
以前はあの手この手で無理やり薬を飲ませていましたが、モモにも私にも大きなストレスになっていました。
なので、残された時間を考え、覚悟の上で投薬をやめました。すると、呆けも徘徊も引き付けも止まったんです。
今はまたモモと私に元の幸せな時間が戻ってきました。
私の最後の希望は、自宅で、私の腕の中で最期を迎えてくれることです」
犬を飼い始めるときには、多くの方が「最期までちゃんと面倒を見られるか」を考えます。
ケガや病気になったら、介護が必要になったらどうするか。
それを考えた上で迎え入れるだけでも、十分責任を持った飼い方だと思います。
ですが、介護の末に“自分の腕の中で亡くなる”ことを想像し、それを最後の希望だと思える方は、どれくらいいるでしょうか。
愛犬が可愛ければ可愛いほど、長生きはしてほしくても、その結末は考えたくないものです。
けれど、そう思えたときにこそ、本当の家族に、そしてレジェンドのオーナーになれるのかもしれません。
必ず長寿に恵まれる魔法はないけれど、そういう想いで一緒に暮らしているうちに、ブヒたちにそっと幸運が舞い降りるのでしょうか。
モモちゃんを抱っこした村雲さんの笑顔は、そんな幸運で輝いているように見えました。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
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