【取材】威風堂々な16歳!8回の手術もなんのその、見守る視線に応える命 #26天
10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。
今回は16歳を迎え、まさに矍鑠(かくしゃく)という言葉が似合うレジェンド・天くんに会いに行ってきました。会って触れてわかったこと、それは様々な病気を乗り越えて生きる姿の背後に、常にオーナーさんの温かな視線があるってこと。
天くんのプロフィール
年齢&性別
16歳の男の子
体重
12kg
大好きなこと
撫でられること、若かりし頃はおもちゃ大好き
既往歴
先天性の類皮腫のため、4ヶ月の時と7ヶ月の時それぞれ2度に分けて手術を受ける。
その後8ヶ月でヘルニアを発症、投薬と注射で治療。
4歳と8歳の時におもちゃの誤飲で胃カメラを受け、ともに鉗子でおもちゃを摘出。
10歳の時に受けたがん検診で脾臓に腫瘍が見つかり、脾臓を全摘出。
8度もの麻酔を乗り切った驚異の体格
扇風機が付けられたカートに乗って心地良さそうにウトウトした状態で登場してくれた天くん。
こんにちはと撫でさせてもらった時、まず何より驚いたのはその立派な骨格でした。
かっちりとした太い骨に大柄な体躯。
これぞ元祖ヨーロピアンタイプの理想系とも言える体格で、だからこそ今まで8回もの麻酔を伴う手術に耐え抜いたのでしょう。
そう、天くんの犬生は度重なる手術との歴史なのです。
天くんは、知人の自宅で生まれた7頭のうちの1頭でした。
生後53日目で杉田さんファミリーに迎えたけれど、やってきた時から目にトラブルが。
「早速眼科に診せると先天性の類皮腫とわかり、4ヶ月と7ヶ月、2度に渡り手術を受けました。
そのほか誤飲、脾臓の摘出で計8回の麻酔を受けていますが、2度の誤飲に関してはオーナーである私たちの不注意だったので、本当にこの子に申し訳なくて。
誤飲を除けば大きな病気は10歳の時に見つかった脾臓の腫瘍くらいで、基本的にはとても体が丈夫な子です。
ただし、パピーの頃から食物アレルギーがあったので、食べ物に関しては試行錯誤したそう。
現在はラム肉を使ったドライフードに、油も添加物も入れず天然水のみで作られた”純“というシーチキンをトッピングしたり、グラスフェッドバターやギーオイルを足して栄養分を補足したご飯で定着しています。
16歳の今も食欲旺盛!
持って生まれた強い体と旺盛な食欲で、脾臓を摘出した後も15歳まではすこぶる元気。
オムツを着けるなど介護生活が始まったのはここ1年くらいのことなんだとか。
「15歳を迎えると目に見えて弱りました。
両目が白内障になって半年前から左目は緑内障に。
それと同時に耳も遠くなって、今ではほぼ見えず音もあまり聞こえていないと思います。
でもオムツが汚れたり、お水が飲みたいなどの要求があればワンワンと吠えて知らせてくれるので、コミュニケーションはちゃんと取れているんですよ」とママさん。
実は天くんには、こちらも6月に11歳を迎えた同じくレジェンドのポノちゃんという妹がいます。
ポノちゃんとの距離は天くんが少し弱ってきてからぐっと縮まったそうですが、ポノちゃんは取材時も天くんを優しく見守ってくれていました。
優しい視線と脱帽もののアイデアに溢れた毎日
少し足元がおぼつかないながらも、自分で立ってゆっくりと歩く天くん。
しかし4ヶ月前くらいから度々ひきつけを起こすようになって、数歩歩くとコテンと倒れちゃうことが増えます。
「ひきつけの原因ははっきりわからないのですが、年齢を考えたら検査を受けさせること自体が負担になると思って。
あえて大掛かりな検査はせず、獣医さんと相談してひきつけを起こした後は安定剤の座薬を使っています。
とにかく天が大好きな自宅で長く過ごさせたいので、痛みだけはないように、辛い思いをしないようにというのだけは気にしていますね」
そう教えてくれながら愛おしげに天くんを見守るママさんは、ご自身も持病があって呼吸器を着けておられます。
そのため取材時にはお母様が代わりに色々なお話を聞かせてくださったのですが、その傍らで会話に出た内容の動画や写真をたくさん見せてくださいました。
日常のなにげないシーンまでたくさんの写真や動画を残してあるところから、本当にいつもしっかり天くんを見守っているんだとわかります。
そんな写真の中で特に気になったのが、自宅内に広げられたビニールプール。
「部屋の真ん中にプールがどーんと置いてあるの、驚いたでしょう(笑)。
天の目が見えにくくなって以来、エリザベスカラーや盲目の子用のペットリングなんかを片っ端から試したんですが、コレだというものがなくて。
思考錯誤した結果、ぶつかっても痛くないし、フリーで動ける範囲を限定できるビニールプールにたどり着いたんです。
大人が十分中で寝られるサイズのプールの床面には滑り止めのコルクマットを敷いて、その中にベッドを入れて自由にさせています。
天も気に入っているのか、快適そうにしていますよ」
これぞまさにレジェンドブヒオーナーの知恵。
どうすれば天くんがより気持ちよく過ごせるかを考えながら、固定概念にとらわれず様々な工夫をすることを実践している杉田ファミリー。
試行錯誤から生まれた工夫でシニアブヒのQOLを向上させつつも、それ以上に天くんを安心させているのは、間違いなくママさんの存在です。
天くんママは月に1度の病院以外、基本的にずっと天くんとポノちゃんのそばにいて、ほどよい距離感で2頭を見守っているそう。
それゆえ、今まで小さな変化や異変にすぐさま気づくことができたのでしょう。
天くんとポノちゃんという2頭のレジェンドたちは、こうしていつも温かい視線の中で暮らしています。
フレブルは元々甘えたで寂しがり屋が多い犬種だからこそ、留守番が少なく常に人の気配を感じられる暮らしは最高のストレスケアになっていると確信しました。
とにかく愛おしい、だから自然のままに
15歳で介護が始まって以来、天くんはどんどん赤ちゃんのような存在になったといいます。
若かりし頃は俺様気質で細かなことは気にしない大らかな性格だったのが、年齢とともに自分でできることが徐々に少なくなり、今ではご飯もスプーンで口元まで運んでもらうんだとか。
「体が大きくジャイアンだった性格がすっかり丸くなって、今はとにかくただただ愛おしい。
吠えていても撫でれば落ち着くし、ご飯を食べさせている瞬間は本当に赤ちゃんみたいでめちゃくちゃ可愛いです。
寝ている時は床擦れしないようこまめに姿勢を変える必要があるなど、手は掛かるけれど、それも含めて愛おしい。
天がこの歳まで生きているのは生まれ持った丈夫な体のおかげで、サプリを飲ませるなど意識して特に何かをしたことはないんです。
お散歩も雨だったら行かないし、ずっと構っているわけでもない。
天にとっては快適そうだったから、これからの余生も今まで通り自由に過ごしてくれればというのが願いです」
取材の途中、カートから降ろしてもらい自分の足で歩く姿を見せてくれた天くん。
その足取りは確かに少し心もとないけれど、それでも天くんはしっかりと床を踏みしめます。
きっとそれは、大好きなママさんやポノちゃんがそばで見てくれていることを知っているから。
わんこイベントでの呼び戻し大会では、いつもダントツの1位だったこと。
筋肉隆々だった大きな体が年齢を重ね、まあるい姿になること。
撫でて欲しいと吠えること。
触れる手の持ち主に全幅の信頼を寄せること。
そして今も時々、おもちゃの引っ張り合いっこをして遊ぶこと。
その全部が愛おしく、その幸せな記憶の全てが表情に刻まれている天くん。
これぞレジェンドブヒのレジェンドたる風格だなあと、取材中幾度となくそのお顔に触れ、改めて高齢ブヒと暮らす喜びを学べた時間でした。
数々の病気と闘い、時に付き合いながらもそれらに打ち勝って16歳という年齢を迎えた天くん。
その長寿の秘訣には、ご家族の“自然体で過ごして欲しい”という気持ちと、ストレスフリーな生活、そして “常に家族の愛を感じる日々”を送ること。
これに尽きるのです。
取材・文/横田愛子
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