ペットロスは誰もがなるもの。獣医師から見た克服への「一番の近道」とは
ペットロスは、ペットを飼っている人なら、程度の大小はあれ“必ず”なるもの。そう語るのが、杉並区にある『ガイア動物病院』院長・松田先生です。
これまで数々のペットの死に立ち会ってきた獣医師の立場から、我々オーナーがペットロスにどう向き合うべきかについて教えていただきました。
目次
“ペットロス”という考え方がうまれた時期
“ペットロス”という考え方が定着したのはいつからなのでしょう。
それもわからなくなるほど昔からあるもので、私たちの生活の中で当たり前になってきていると思います。
また、ペットロスは、動物と生活していれば誰しも経験する可能性があります。
そんな、当たり前で誰がなってもおかしくないものだからこそ、知って欲しいのが今回のお話。
私は残念ながら獣医師なので、ヒトの心のエキスパートではありません。
でも動物の死にとても近い場所、すなわち飼い主さんがペットロスになっていくときに近くにいることが多い立場でもあります。
そして私自身も、飼っていたネコが3歳で突然亡くなったとき。パニックになってしまったポンコツ獣医師。
ですが、その経験と、これまでの診察の現場で得たことをもとに、獣医師目線でペットロスについて、その向き合い方をお話させていただきたいと思います。
ペットロスはこんな症状
文献によって若干の違いがある様ですが、ここでは“ペットが亡くなったことをきっかけに精神的または身体的に落ち込んでしまうこと”という意味で使っていきます。
【精神的な変化】
・悲しい
・不安で落ち着かない
・孤独を感じる
・自分のせいだ、などと罪悪感を持つ
・何に対しても悲観的になる
・怒りが抑えられない
など。
【身体的な変化】
・食欲が出ない
・頭が痛い
・寝れない
・気持ち悪い
・めまい
・常にだるい
・蕁麻疹が出る
など。
その症状は実に様々。日常生活に影響が出るほどひどくなることも多々あります。
ペットロスにならない方法はひとつしかない
ペットロスにならないためには、“ペットを飼わないこと”しか無いと思います。
「なんて暴論だ!」と思われるかもしれません。
しかし、ペットは家族。ペットを失った喪失感は、両親、兄弟、お子さんが亡くなったときと同じ。
家族として一緒に生活している以上、程度に差はあれ誰しもがペットロスを経験します。
避けられないものならば、ペットロスにならない方法を一生懸命考えるより、ペットロスになったときどんな対処をするべきかを考える方が、ずっと簡単です。
それを探っていきましょう。
ペットロスは普通のこと! 悲しみを溜め込まないで
愛情をそそいできた家族を失えば悲しいのは、いたって普通のこと。
相手がイヌ・ネコだけでなくウサギ・モルモット・ハムスターなどだってペットロスになります。体の大きさは関係ありません。
そして獣医師だってペットロスになります。
中には「動物が死んだくらいで、泣いたり悲しんだりするのはおかしい」と思う方もいるようです。
しかし自分の感情に蓋をし、泣くのを我慢したり、つらい気持ちを吐き出さずに溜め込むことが、ペットロスを悪化させる一番の要因だと言われています。
また、これは個人的な見解ですが、うちの病院に来るオーナーさんを見ていると、真面目な方や、とても一生懸命に動物のお世話をする方ほどペットロスに陥りやすいと感じます。
生きているうちにできること
また、ペットロスがひどくなる一因としてほかにあげられるのが、“突然のお別れ”。
心の準備がないぶん、心の負担も大きいように感じます。
交通事故など不慮の事故の場合はしょうがないのですが、病気に関しては早めに対処することで、ある程度“突然”を避けることができると思います。
動物はヒトよりも寿命が短い分、病気の進行も早いものです。
近年では、若い頃から半年に一回の健康診断を受けることが勧められています。
日頃から後悔の無いよう、やれることをやれる範囲でやってあげてください(一生懸命な人ほどペットロスになりやすいと言っておいて…ではありますが、難しいところです)。
亡くなってからできることもたくさんある
多くの動物病院では、亡くなった際にお寺などをペットを供養する場所を紹介してくれます。
お寺では合同火葬なのか個別なのか、墓地も共同なのか個別なのか選べます。
近頃は自宅前まで火葬車が来てくれて、そこで火葬してもらえるサービスも。
また、お骨を海に撒いたオーナーさんもいらっしゃいました。
ご自宅にお庭がある方は、火葬でなく埋葬するのも選択肢です。
火葬する前に愛犬の毛を残しておいたり、足跡スタンプを作るのもいいでしょう。
こういったことは、亡くなったペットのためだけではなく、ご自身の心の整理にもとても良いようです。
獣医師から見たペットロス克服への「一番の近道」とは
これは半分余談ですが…獣医さんはペットロスの専門家ではないことがほとんど。
最近はどうなのかはわかりませんが、少なくとも私が学生時代だった頃にペットロスについての授業はありませんでした。
ですので、ペットロスについて学びたければ独学でやるしかありません。
今でこそ参考書に書いてあることもありますが、それでも分厚い本の中でもたった数ページだけであることがほとんど。
そもそも、ヒトの心のことなので、参考書を読んでどうにかなるものでもないと思いますが…。
ですのでボクは、動物が亡くなった時に獣医師として何ができるのか、毎回悩みます。
何かしたいけれど、話せば話すほど空回ってしまったり…。
これを読んでくださっている方の中にも、もしかしたら「獣医師に心無い言葉を言われた」と感じてしまった方もいるかもしれません。
しかし決して悪気があるわけでは無いので、お許しいただけるとありがたいです。
ペットロスの程度、回復期間はヒトそれぞれで全く違います。
何をきっかけに立ち直るかも当然違ってきます。
立ち直ることがゴールではない方だっています。
ボクの患者さんの中には、「この悲しさと付き合っていく!」と決めてから生き生きし始めた方もいました。
ペットロスについては、特効薬もなければ正解もありません。しかし、できるだけ多くの方とお話しすることが一番の近道と感じます。
身近に似たような境遇の方がいなければ、体験談を本で読むのも良いかもしれません。
今回のお話が誰かの一助に、またペットと過ごした日々が楽しい思い出となり新しい生活の糧になるきっかけになれば幸いです。
【病院DATA】
ガイア動物病院
〒167-0022 東京都杉並区下井草1-23-2
電話番号:03-5311-1250
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