2021年7月31日5,521 View

やりがちだけどNG!愛ブヒをダメにする「やってはいけない社会化」4パターン【社会化を学ぶ Vol.3】

国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。実はかなり多くのオーナーさんが勘違いをしている“社会化”について、正しい知識をシリーズでお伝えしています。ぜひVol.1から読んでみてくださいね。

フレンチブルドッグ,しつけ

「やってはダメな社会化」知っている?

フレンチブルドッグ

Christina Jager/shutterstock

 

日本でもここ数十年の間に“子犬の社会化”が、広く認知されてきました。

 

社会化は“心のワクチン”と表現されるほど、子犬の一生に関わるとても大切な時間。

 

家に迎えたら少しでも多くの時間を社会化に費やしてあげましょう。それが皆さんと子犬の未来を守る糧となります。

 

しかしやり方が間違っていては、子犬の心と体を傷つけることに。

 

今回は“やってはいけない社会化”のシチュエーションと、その理由を紹介していきます。

 

しかしその前に、過去記事『え…社会化したのにイイコにならない!? よくある「社会化の勘違い」とは 【社会化を学ぶ Vol.1】』で“社会化とは何か?”を正しく知ってください。

 

その上で今回の記事を読んで頂くことをおすすめします。

 

こんな社会化はダメ!その1「オーナーさんによる環境設定がよくない」

フレンチブルドッグ

Sarawut sriphakdee/shutterstock

 

◼NG例 

・人に慣れさせようと、他人から子犬に食べ物を与えてもらおうとお願いしたが、勝手に抱っこされたりなで回されてしまい子犬が驚いてしまった。

 

・電車の音に慣れさせようと踏切のすぐそばに立っていたら想像以上に音が大きく、子犬が震えてしまった。

 

・ドッグランに子犬を入れたら、他の犬に子犬が追い回されて怖がってしまった。

 

◼NGな理由

これらは良い経験ではなく悪い経験をさせてしまっています。子犬に何でもかんでも刺激を与えれば、社会化が進むというものではありません。

 

子犬が「これは安心、安全だ」と思える良い経験を積むことで、子犬が自信を持てるようになることに意義があります。

 

子犬を怖がらせるようなできごとになってしまえば、それは社会化にはなりません。

 

電車の近くや工事現場の側に行くなら、まずは離れたところで子犬の様子を伺いながら、少しずつ近づいてください。

 

触れ合う相手や状況は、オーナーさんが慎重に選びましょう。

 

こんな社会化はダメ!その2「子犬を助けない」

フレンチブルドッグ

Joel Matthews/shutterstock

 

◼NG例

・他の犬と挨拶させようとしたら、子犬にマウンティングをしようとしたり、吠えかかってくる犬だった。しかし犬同士のことなので、子犬を放っておいた。

 

・子供と社会化をしようと小学生に近づいたが、大きな声を出して子犬を脅かす子だった。しかしこれも経験だと思って見守った。

 

◼NGな理由

言うまでもなく、これも悪い経験でしかありません。

 

こんな不安や恐怖を感じる状況で子犬を放置してしまったら…社会化どころか、オーナーさんへの信頼感が絶望的に下がるだけ。

 

まだ何もわからない赤ちゃんが「怖い! 誰か助けて!」と言っているのに、保護者が「困難は自分で乗り越えるのだぞ」なんて無責任に放っておくのですから、当然です。

 

結果、子犬が自分を守るために編み出した方法が“怖いときは相手に噛み付く”、“吠えまくる”になったら、誰が幸せでしょうか? 

 

社会化は、決して怖い状況を自力で乗り越える練習ではないのです。

 

こんな社会化はダメ!その3「相手を助けない」

フレンチブルドッグ

Stefan Holm/shutterstock

 

◼NG例

・自分の子犬が他の犬にマウンティングをしたり、追い回したりしていて、相手の犬が嫌がっていそうだった。しかし相手のオーナーさんがどうにかするだろうと思って放置した。

 

・自分の子犬が他の人や子供に飛びかかったり甘噛みをしている。相手の人が「いいのよ」と言うので、人に慣れる機会だと思って見守ることにした。

 

◼NGな理由

これは、“子犬を助けない”の逆パターンですね。他者に自分の子犬が望ましくない行動をとっている場合にも、必ず止める必要があります。

 

よくオーナーさん同士で「うちの子は大丈夫ですから」なんて言っているのを見かけますが、それは他人に良い顔をし過ぎて家族を犠牲にしています。

 

ワンちゃんたち全員が気持ちよく過ごせるよう、オーナーさんたちはレフリーのように目を光らせていましょう。

 

しかし、子犬はまだ社会のルールを知りません。望ましくない行動をとっていても、大声を出したり体罰を与えたりするのは絶対NG(子犬に限らず罰は厳禁です!)。

 

では、子犬が望ましくない行動をしたらどうするべきでしょうか? 

 

そういうときは“タイムアウト”を取ります。

 

オーナーさんがレフリーとなり、子犬と相手の間に介入して、遊びを“数秒間”中断させましょう。

 

すると子犬は「ちぇっ、マウンティングをしたら遊びが止められちゃうのか」と学ぶわけです。

 

数分のタイムアウトを推奨する本もあるようですが、それは長すぎ。3〜5秒程度で十分です。

 

当然、子犬は1度では学習できません。何度も何度もしつこくタイムアウトを入れ、望ましくない行動を減らしていきましょう。

 

こんな社会化はダメ!その4「愛ブヒに強要する」

フレンチブルドッグ

Lee waranyu/shutterstock

 

◼NG例

・なかなか他犬にお尻を嗅がせないので、子犬の体を押さえてお尻を嗅がせる練習をした。

 

・ビクビクしてなかなか対象物に近づかないので、リードで引っ張って、人、犬、物などに近づけた。

 

◼NGな理由

社会化とは、子犬自身が自分のペースで対象物に近づいたり離れたりしながら安全かどうかを調査する時間です。

 

しかし上記では子犬のペースを無視してオーナーさんのペースになっています。

 

例えば、夏場に地面に落ちているセミと、子犬が出会った様子を想像してください。

 

「面白そうだな、近づいてみよう! くんくん」

 

「ひゃっ動いた! ちょっと怖いから離れようっと」

 

「ん? 離れてみたら、大丈夫な気がしてきたぞ! もう一回調査だ♪」

 

こうやって自分のペースで安全を確認するのです。

 

なのに無理やりリードで引っ張ったら、もしも子犬が怖いと感じたとき、子犬が望む距離が取れません。

 

逃げたいときに逃げられないのは恐怖。社会化でやってはいけないことの1つです。

 

“短気は損気”だと心得て、子犬を温かく見守ってください。

 

こちらについては、社会化の基本が書かれた過去記事『「○回やったからもう大丈夫」は無い!正しい社会化のやり方とは 【社会化を学ぶ Vol.2】』で詳しく説明していますので参考にどうぞ。 

 

こんなときは専門科に相談

フレンチブルドッグ

Inna Astakhova/shutterstock

 

子犬を迎えたら、それが何頭目であったとしても色々な壁にぶつかります。そんなときには一人で悩まず専門家に相談しましょう。

 

毎日、スポンジのように多くのことを吸収する子犬の時期は貴重です。

 

問題が起きてからではなく、問題がまだない子犬の時期にこそ、1日でも早くプロのサポートを受けてください

 

ドッグトレーナーに依頼をする場合も、そのトレーナーが

 

(1)社会化に関しての知識を持っているか、子犬の社会化に関しての豊富な経験を持っているか

(2)学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか

 

この2点を確認しましょう。

 

子犬に限らずどの年齢でも、罰を使ったり、痛みや恐怖を伴う犬具を使用する指導者は、いかなる理由があろうとも、最愛の家族の先生としては不適切です。

 

また、1人のトレーナーと会っただけで決めず、少なくとも3名以上と会ってから、最適と思われるトレーナーに依頼をしてください。

 

社会化にはオーナーさんの時間と忍耐力が必要

フレンチブルドッグ

ET Drone Home/shutterstock

 

社会化は人間の考えるスケジュール通りには進みません。子犬側のペース、子犬側に必要な経験の回数は、私達に決められるものではないのです。

 

ですから、人間の幼児の成長に時間がかかるように、社会化にも時間がかかります(とはいっても、数十年かかる人間の成長よりは数倍早いですが)。

 

それはオーナーさんの想定をはるかに超える時間でしょう。

 

つまり、社会化に一番必要なもの、それはオーナーさんの時間と忍耐力です。

 

子犬のペースに合わせて自分の生活をアレンジできるように、十分な時間と心の余裕を持てる準備ができてから子犬を迎えるようにしましょう。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 

SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

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