この夏も愛犬が隣にいてくれたこと。来年もその次も、何度でも君と季節を迎えよう。
なぜだろう。夏の終わりというのは、なんだか感傷的な気分になるものだ。あれほど暑く、過酷で、君たち遊び好きのフレブルはすっかり参ってしまう季節なのに。日本には4つの季節があるけれど、季節の終わりを寂しく感じるのは夏だけじゃないのかな。それに、春の終わりや秋の終わりなんて言わないように、季節の終盤を「終わり」と表現するのも夏だけのように思う。閑散とした砂浜や、また次の夏が来るまで閉じられたビーチハウス。そしてこの夏も相棒である君が隣にいてくれたこと。ねえ、また来年も、その次も、一緒に夏を迎えよう。
この夏も、君が隣にいてくれたこと。
フレンチブルドッグと暮らす人間にとって、夏は歓迎すべき季節じゃない。けれどこうして夏がそろりと去ろうとすると、なんとも言えず寂しくなる。
それと同時に、この夏を相棒と一緒に乗り切れたことに安堵し、また次の夏を共に迎えられるようにと願う。
きっと多くのフレブルオーナーが同じように思い、そのまあるい背中を抱き締めるのだろう。
とりわけ夏にこんなことを思うのには、お盆という行事が大きく関係しているようにも思う。
SNSを見てみれば、お盆の前後になると一足先にお空へと出かけた愛ブヒの帰宅に備え、山のように好物を準備して待っている人がたくさんいる。
そして「ゆっくりしていきなよ」と言葉が添えられていて、ああ、どの子たちも生前と変わらず愛されているんだと目頭が熱くなる。
愛すべき存在を失うと、その喪失は長く心についてまわるのだろう。
思い出すたびに苦しくなることもあれば心が温かくなることもあるけれど、一旦この手から飛び立った存在を再び迎えることができるのは、夏だけ。
お盆という行事があるからこそ、たとえ実態が伴ってはいなくとも、再びあの大きな笑顔に出会える気がするのだ。
時間が経ってもまた会える。
夏のあの数日間はただいまと帰ってきてくれるように思うから、やっぱり夏は特別なんだろう。
密に過ごした夏の休日。
今年の高校野球の優勝校の監督が「青春は密なので」という印象的な言葉を残している。
青春を遠く過ぎても、夏のフレブルと飼い主という関係はとても密だ。
もちろん春も秋も冬も一緒に過ごしてはいるのだけれど、暑さで出かけることもままならず、同じ室内で向き合う時間の長さはやはり夏ならではだろう。
冷房の効いた部屋でスイカを分け合ったり、外出できないかわりに即席プールで水遊びをしたり。
一緒に出かけられる範囲が狭まるからこそ工夫を凝らして愛ブヒを楽しませようとする行為は、日常の上に思い出を積み重ねていく行為でもある。
思い出を作るとき、私たちはまず普段とは違う場所や体験をしようと考えないだろうか。
愛ブヒとの旅行、キャンプ、イベントなど、ブヒと手と手を取って非日常へと身を投じることが思い出作りだと思いがちだが、茹だるような暑さがそれを阻む。
だから日常、つまり日ごろ生活している範囲内で何か楽しいことを探すけれど、後になるとそういう日常の上にある思い出の方がずっと心に残っていることに気づくはずだ。
だって、愛ブヒが旅立った後も私たちはその日常を生きていくから。
庭での行水、台所でスイカを切るのを足元でじっと待つ相棒の後ろ姿、遠く聞こえる花火の音に傾ける耳の角度まで。
日々の生活の端々に記憶が散りばめられていて、それはやっぱり家で過ごすことが多い季節だからに違いない。密に過ごした夏は、きっと何年経っても色褪せないのだ。
また、来年も。
愛ブヒが今隣にいる人も、心の中にいる人も。今年の夏が去ってしまえば、またぐるりと季節が1周し来年の夏がやって来る。
その時も同じように最愛の存在を感じていられることを願うし、叶うのならば何度も何度も一緒に夏を過ごしたい。
誰の身にもいつの日にか「最後の夏」はやってくるけれど、それは生き物にとって必然。
だからどの夏も等しく、一緒に笑って過ごせたなら。それがどんな季節であれ、共に日々を過ごせるというのはとても幸せなことだ。
暑くても寒くても、ついでに今は気候の良い時期なんてほんの少しになってしまったけれど、何度も繰り返す季節をなるべくたくさん並んで歩こう。
たとえ君が少し先を歩いて空へと駆け上がったとしても、夏が来るたびにまた帰ってくるんだよ。
そんなことを思いながら夏の終わりを眺めていれば、隣にはまだまだ暑そうにクーラーの冷気を一心に浴びるまあるい奴がいる。
今年も夏が終わる。
フレンチブルドッグも夏の終わりには感傷的になったりするんだろうかなんて考えてみたけれど、それより目の前のおやつの方がずっと気になる彼らにとって、最高の季節というのは大好きなアナタが横にいてくれる季節なんだろう。
おわりに
夏が過ぎ、秋が来れば今度は一緒にあちこちへと出かけられる季節。
その季節ごとに愛ブヒとの思い出を刻み、積み重ねていくこと。
いつかその思い出を振り返って笑えること。
すべてのフレブルたちが、どうかオーナーさんと共にいくつもの季節を巡れますように。
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