2017年8月26日20,859 View

【膝蓋骨脱臼】発見が困難〜症状・原因・予防法を覚えておこう〜

小型~中型犬の多くは、日常的に「膝蓋骨が左右に脱臼をくりかえしている」といわれています。もちろんフレンチブルドッグもおなじです。

膝が外れる……いったいどんなことが起こっているのでしょうか。

今回は「膝蓋骨脱臼」の症状や原因についてお話しいたします。

フレンチブルドッグ脱臼

killkenny/shutterstock

病気のサイン

歩いていたら急に足をケンケンした/ジャンプしたあとキャンッと鳴いてそのまま震えている/病院で膝が悪いといわれた

 

 

原因

膝蓋骨脱臼は、事故などのアクシデントにより外傷性に発生することがあります。

 

ところが、フレンチブルドッグの場合は膝の過伸展や背骨の変形などがよく認められますので、もともと遺伝的に関節の形成異常が関与しているのではないかと考えられます。

 

膝蓋骨は太ももの場所にある大腿骨先端の溝の中(滑車内)にはさまり、左右にずれることはありません。

 

しかし、関節の形成異常や、筋肉の動きに微妙なズレが生じると、膝の屈伸運動の際に膝蓋骨が脱臼することがあるのです。

 

 

症状

フレンチブルドッグ脱臼

Athi Aachawaradt/shutterstock

犬がケンケンしたり、痛みをうったえることもありますが、飼い主さまから見て「無症状」であることがとても多いです。

 

そのため、なかなか気づけずかかりつけの病院ではじめて指摘される方もたくさんいらっしゃいます。

 

じつは、脱臼そのものは犬たちにあまり痛みを感じさせないのです。

 

しかし、脱臼をくりかえすごとに軟骨が損傷し、骨関節炎が起こり、さらに支えている靭帯の損傷も起こることで痛みを生じます。

 

重度になれば膝を伸ばすことができなくなります。

 

 

診断

フレンチブルドッグ脱臼

Bule Sky Studio/shutterstock

膝蓋骨脱臼の診断は、一般的に獣医師による膝の触診となります。

 

レントゲンを撮影することで、膝の脱臼を目視で確認することもできます。また、触診の状態から4段階のグレードに分類する方法も用いられています。

 

グレード1

膝を伸ばしたときに徒手にて膝蓋骨を滑車溝から脱臼させることができるが、指を離すとすぐに滑車溝に戻る。

 

グレード2

膝を伸ばした時に徒手にて膝蓋骨を容易に脱臼させることができるが、指を離してもすぐには滑車溝に戻らない。後肢を内転・外転させると容易に膝蓋骨を脱臼・整復できる場合が多い。

 

グレード3

膝蓋骨はつねに脱臼しており、徒手にて整復が可能であるが、指を離すとすぐにまた脱臼してしまう。

 

グレード4

膝蓋骨はつねに脱臼しており、徒手にて滑車構内に整復するのが不可能である。脛骨のねじれなど、骨格に形態学的な異常の認められる場合がある。重症例では膝関節の伸展機構が破綻しており、膝関節を自力で伸展することができない。

 

ただし症状とグレードは一致しなことも多く、グレード1であっても痛みが強い子もいれば、グレード4でも痛みをうったえない子もいます。

 

膝蓋骨は、前述の通り滑車溝をいったりきたりすることで軟骨がすり減り痛みを生じることもありますし、膝蓋骨を支えている靭帯が損傷をうけ、痛みが生じることがあります。

 

激しい痛みをうったえている場合には、靭帯での炎症・損傷が強い可能性もあります。

 

 

治療法

フレンチブルドッグ脱臼

Antic Milos/shutterstock

膝蓋骨脱臼の治療法には内科的と外科的な治療法があります。

 

内科的治療

保存療法ともいわれ、痛みや炎症があるときに消炎鎮痛剤を用いたり、後肢の筋肉を強化するリハビリテーションなどを行うことで脱臼のリスクを減らします。

 

外科的治療

手術で膝蓋骨を“あるべき場所”に整復します。骨をけずったり、ときに大腿骨を短くして靭帯のテンションをゆるめるようなことも行われたりします。

 

術式は専門家の間でも様々です。ただし、もともと不安定なものを安定化させる手術なので、ときに再脱臼を起こしてしまうこともあります。

 

症状がない、もしくは気づきにくいこともあり、どの状態で手術をすべきかは獣医師によっても意見が分かれるところです。

 

実際にはグレード1という一番軽度の状態であれ、すでに骨の炎症、すり減りが起きていることがわかっていますが、痛みやその他の症状が全くなければ、経過観察をする場合が多いのかもしれません。

 

グレード4は、グレード1〜3とは病態がまったく異なり、骨の変形をともなったり、膝を伸ばすことができずに不自然な歩き方になってしまうため、手術の適応となります。

 

何よりも重視すべきなのは「症状があるか、ないか」だと考えられます。

 

グレードがいくつであれ、もし膝蓋骨脱臼により痛みを生じていたり、歩行様式に問題があるならば、それは手術の適応となると思われます。

 

体重の軽い小型犬であれば、内科的に保存療法でも問題がないこともありますが、フレンチブルドッグのように体重が10kgを超えてくると、膝蓋骨の脱臼は関節への負担も大きくなっていきます。

 

 

予防

フレンチブルドッグ脱臼

Cookie Studio_shutterstock

膝蓋骨脱臼は遺伝的に起きていることがとても多いので、予防は難しいといわれています。

 

しかし、1歳までの成長期は関節にゆるみがありますので、この時期はできる限りフローリングなどのすべる床はさけていただき、しっかりと体重を支えられる床材を選択してあげるのはとても重要なことです。

 

また、フレンチブルドッグは肥満になりやすい犬種ですので、体重を適切にコントロールすることも重要です。

 

膝蓋骨脱臼は一般の飼い主さまには発見が難しい場合が多いので、定期的に動物病院で健診を受けられることをお勧めいたします。

 

 

治療費

(再)診察料:1,000〜2,000円

内科療法:5,000〜

外科療法 :200,000〜500,000円

 

※症状や病院によって相場は異なります。あくまでも参考金額です。

 

フレンチブルドッグ病院

獣医師:堀江志麻先生

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